社団法人日本畜産副産物協会
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我が国における肉骨粉の利用について
肉骨粉のリスクマネージメント
レンダリングとは
畜産副産物とは
1.レンダリングとは
 レンダリングは、アメリカの食肉加工業からきた言葉で、脂肪を溶かし精製して油脂にするという意味です。牛や豚などの家畜から食用となる肉類を除いて、直接食用にできない脂肪は、熱を加えて溶せば、牛脂やラードなど馴染みのある食用の油脂に、また石けんなどの原料にもなります。油脂を生産した後には、絞りかすとなる肉粉といわれる副産物ができ、ペットフード原料などに利用できます。
 この他に食肉加工業では、骨や内臓などの不可食部位が発生しますが、これらはまとめて熱処理によって、油脂と固形分(蛋白とカルシウムなど)が生産されます。油脂は石けんなどの工業用と家畜の飼料に利用され、固形分は肥料や飼料に利用できます。
図1
 牛はBSEが発生し大きな問題となりました。牛は、と畜場でBSEの検査を受け安全性が確認されたものが食用等に利用されますが、BSEのリスクが高い特定危険部位は、適切に除去し処理された後に、焼却されています。更に、牛の肉骨粉等についても一定以上の温度気圧で処理され、安全性が確認された蒸製骨粉等を除き、安全性が確保されていないものは全て焼却されています。従って市場に出回る鶏、豚の肉骨粉等には混入されることはなく、これらの利用では安全性が確保されています。


 このようなレンダリングをおこなうレンダリング産業は、アメリカやヨーロッパのみならず畜産業や食肉加工業がある国々では必ず必要な産業として生産活動を行っています。また、畜産業や食肉加工業を支える産業であるとともに、生産された製品は多くの用途に供給するという役割も担っています。
2.レンダリング産業とは
 わが国のレンダリング産業は、BSE発生以降、大きく変貌しています。それは、BSEによる食と飼料の安全性を確保するために、プリオンが蓄積しやすい特定危険部位が混入して処理されないように、牛の特定危険部位を適正に除去して処理するとともに牛、豚、鶏など畜種別に処理する体系が全国に整備されたことです。
 これによって、今から供給される肉骨粉を原因とするBSEの発生は未然に防止されています。レンダリング産業は、原料と製造方法により大きく4つに分類されます。


1)畜産動物油脂製造業
 牛や豚の脂肪を原料として、牛脂やラードを生産するのが動物油脂製造業です。1部には鶏の脂肪を原料として、鶏脂を生産する製造業もあります。食肉加工業や食肉店から脂肪が集荷されていますが、食用となるために鮮度を維持して工場まで運ばれます。集荷された原料はその日のうちに熱処理が行われ、油脂中の不純物を取り除いて、油脂が生産されます。アメリカでは、このような油脂製造業をファット(脂肪)レンダリングといわれています。
図2
2)獣畜処理製造業
 牛や豚、鶏の不可食部位を専門に処理するのが獣畜処理製造業です。この製造業でも集荷された原料は、約130℃以上の熱処理が行われ、油脂と固形分が生産されますが、畜種別に処理するラインが整備されていますので、ライン別で用途が異なります。牛の処理では、油脂は蛋白等のきょう雑物が除去され、工業用や飼料用になりますが、肉骨粉はBSEの危険性を排除するために焼却されます。豚と鶏は、BSEとは関連がありませんので、肉骨粉は飼料用、肥料用に利用され、油脂は工業用や飼料用に利用されます。
 この製造業は、生産された製品が家畜の飼料となることから、リサイクル産業といわれています。有効な資源を適切に処理することによって、価値のある製品を生産するという畜産業にとって重要な位置を占めています。アメリカでは、この業種をアニマルレンダリングといわれています。
図3
 ここで生産される牛脂は、国際獣疫事務局(OIE)が定める基準に従っているため、安全性が確保されています。
3)フェザー処理業と蒸製骨粉製造業
 鶏にはフェザー(羽)がありますので、その処理は別ラインで熱処理が行われて、フェザーミールが生産されます。この用途は、飼料用や肥料用となります。
 牛の骨粉はリン酸肥料としての価値が高いために、有機質肥料として貴重な供給源でしたが、BSE発生で一時中断しました。しかし、特定危険部位が除去されるとともに、国際獣疫事務局(OIE)が定める不活性化条件(蒸製処理:133℃、3気圧、20分)よりも厳しい条件で処理されていること、国が定めた製造基準に適合すること、流通では飼料用に混入しないことなどを条件に蒸製した牛の骨粉は肥料に利用されています。
図4
4)死亡牛処理業
 24か月齢以上で死亡した牛は、BSEの浸潤状況の把握、清浄性の確認等をおこなうため、BSE検査が都道府県にある家畜保健衛生所の職員により実施された後に、BSE陽性牛等は焼却処分されます。BSEフリーの死亡牛等は処理して、肉骨粉及び油脂は焼却されます。
 また、食肉店などでは枝肉を取り扱っていますので、危険部位に準じるとみなされる牛のせき柱が発生しますが、別に集荷して産業廃棄物処理場死亡牛と同じラインで処理されます
図5
3.レンダリング原料と製品の特徴
(1)食用としての原料
 レンダリングの原料は多岐にわたりますが、特に豚の骨や脂肪は、わが国の食文化の代表であります「ラーメン」のスープ原料として重要となっています。また、さまざまな食品の隠し味となるエキス(天然調味料)製造にも、豚や鶏の骨が用いられています。このようにレンダリング処理される原料には、食用加工になるものが含まれています。
(2)レンダリング原料
 レンダリング原料は、食用になる原料を除いて、製品となる油脂や蛋白の品質を確保するために、原料の鮮度を維持するよう運搬され、工場ではその日のうちにレンダリングするという工程をとっています。
(3)食用・工業用としての油脂
 食用油脂製造業での牛脂や豚脂などは食用加工油脂となりますが、これは油脂加工業によってマーガリン、ショートニングなどを生産する原料となります。また、豚脂はさらに精製されラードとなり揚げ物用となります。工業用加工油脂は、脂肪酸分解されて石けんやゴム添加剤などに利用されています。
(4)飼料用・肥料用としての蛋白
 レンダリングでは、油脂のほかに蛋白やカルシウムの固形分が生産されますが、これは穀物からでは不足する栄養分を供給しており、家畜用の飼料やペットフード、養魚用飼料となります。また、有機質肥料として、有機栽培の野菜などの肥料となります。
4.レンダリングの役割
 レンダリング産業は、直接食用にならない未利用な資源を熱処理することで、さまざまな分野で有効に利用できる油脂や蛋白製品を生産するという役割を担っています。未利用資源をそのままにしていれば、生ものですので腐敗するため、適切に処理することが極めて重要です。このため食肉加工業は、レンダリング産業が存在しなければ、食肉を供給することができません。また、畜産業では、死亡牛を適切に処理することをレンダリング産業がになっているため、畜産業はレンダリング産業に支えられています。
 レンダリングによる製品は、多岐にわたる分野に利用されますが、畜産業の飼料となることから、リサイクル産業として畜産・食肉加工業とともに重要な位置を占めていることになります。BSEの危険性を除去するために専用ラインを整備し、そこで処理することより、安全な油脂や蛋白を生産し、各分野に供給するという役割は循環型社会の形成において先駆的な位置にあるといえます。


 なお、ここでの食肉加工業とは、食肉センター・と畜場・食肉卸売市場など総称する言葉として用いています。

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